人文学における「樹」の格言

人文学の世界で、樹は含蓄に富む人生の教科書のような存在である。
  
■チャンドーギア・ウパミシャッド(インド哲学の奥義書)
“樹は宇宙全体であり、永遠の現実であり、そしてそれが汝である”
■ギリシャの哲学者プラトン
“人間は逆立ちした樹木である”
■クレルボーの聖ベルナルドゥス(フランスの聖人)
“汝は、書物においてよりも森の中で、多くのことを発見するであろう。樹木と岩により、いかなる師によっても明かされることのない多くの事柄が汝に教えられるだろう。”
■「バウムテスト」の創案者コッホ
“樹木は内なるものを外に出す法則を有し、内面と外面、深層と表層の混合である。”


古来より樹は度々擬人化され、人もまた擬[樹]化されてきた。
この両者を繋ぐシンパシーの正体とは何なのでしょうか?
人間が、その風土において生き死にする限り、その風土に根を張り、天に伸び上がりつつも立ち続ける樹木という存在は、自然、自身をなぞらえてみたくなる対象となり得るのかもしれません。

夢の分析や無意識の分析で深層心理学の礎を築いたドイツの心理学者C.G.ユングは、以下のように考察しています。

“樹の表面上の形態は、時の流れの中で変わり得るが、象徴としての豊かさと活力は、いっそう露に描写されることになる。平均して最もよくその意味と結び付けられるものとしては、成長、生命、物質的・霊的な形態の展開、発達、下から上へ・上から下への成長、母性的様相、老齢、個性、そして最後に、死と再生がある。”

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